ノイバラ (野ばら、シロイバラ、)  ばら科
2011年6月16日

 水辺など湿り気のあるところが好きな灌木です。高さ2m位の落葉灌木で奇数複葉、5〜6月頃に直径2cm位の白い花を多数つけます花序は円錐形です。幹、枝ともに棘がありあまり近寄りたくない木です。

 バラ科の植物は仲間が大変多くて、約100属3000種が世界中に広く分布しています。共通しているのは花の作りで、概ね花弁5、雄蕊多数、雌蕊1が普通です。但し園芸品種では雄蕊が花弁のようになり八重咲の花もあります。

 さて、この棘だらけの木の用途として、園芸用の薔薇の接ぎ木の台になるそうです。他に何か用途が有りましょうか。 しかし、文学の世界では詩や歌に盛んに登場します皆さんもよくご存じのシューベルトの「野ばら」(作品3-3 D257)「少年は荒れ地に一輪の小さなばらがたっているのを見た」で始まる「野ばら」の作詞者が哲学者ゲーテであることを私は最近まで知りませんでした。シューベルトの曲に出てくるヨーロッパの野薔薇の花はピンク色だそうです。他に佐藤春夫の詩の中に「うす濁る小川のほとりにノイバラがほの白く咲いている」という一節があったように思います。

  望郷の詩人与謝蕪村は 「茨の花」と題して3首 「かの東皐にのぼれば  花いばら古郷の路に似たる哉」 「 路たえて香にせまり咲くいばらかな 愁いつつ岡にのぼれば花いばら」 また、「春風馬堤曲」(安永6年)の中で、「 堤ヨリ下テ摘芳草 荊與蕀塞路 荊蕀何妬情 裂裾且傷股」でと 、今の言葉に直すと(堤より下りて芳草をつめば、荊と蕀が路をふさぐ、荊蕀なんぞ妬情なる、裾を裂きふくらはぎを傷つく、)荊蕀はともに茨のことです。

 蕪村は大阪の市外毛馬村の出身ですから(今の大阪市都島区毛馬町に当たります)多分淀川の河川敷にはノイバラが茂っていたのでしょう。馬堤とは毛馬村の「長柄堤」のことです。近い仲間にテリハノイバラが有ります。海岸の砂浜に盛大にはびこっています。葉の表面にクチクラ層が有って葉に艶が有ります。テリハと言われる所以でしょう。茎はあまり立ち上がる事無く砂の上這いまわっています。花は3cmぐらいでノイバラより少し大きめです。
   


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