コブシ (拳)やまあららぎ、こぶしはじかみ もくれん科
2011年4月1日
新緑にはまだ少し早い雑木林の山肌にコブシの白い花が点々と咲きだすのは、ヤマザクラと同じくらいか少し早いかの時期です。葉の伸びる前に花を開くのでよく目立ちます。
分布は北海道から九州までとされていますが、当地方では自生のものは見かけません。その代り、近い親戚筋にあたるタムシバを北鈴鹿、石槫峠付近の標高800m辺りで見かけます。
コブシは分布から見ると東北、関東、日本海側に多いようで、歌謡曲の歌詞にもあるように北国の印象が強いのです。しかし花弁の大きいハクモクレンほどの派手さはありませんが此のあたりでも街路樹(波木南台)や公園(南部丘陵公園)にはよく植えられています。
コブシの名前は蕾の形が(拳)に似ているからとの解説や、果実の形が(握りこぶし)に似ていると言いますが、どうも果実の形が握りこぶしに似ているとの方が近いように思います。花は生殖のため葉から変じて今のような形になったと言われています。昔、土岐善麿のエッセーに『花は葉の子供である、親である葉は子供にあらゆる色を与えたが、ただ一つ「緑」だけは与えなかった』と
いうようなことを書いておられたように記憶しております間違いだったらごめんなさい。
何を言いたかったかというと、モクレン科の花の作りはバラ科やマメ科、などと花の作りが違っていることです。サクラでも、ナノハナでも花弁をとってみると雄蕊が周りにあって、中に独立した雌蕊があります。しかしモクレン科の花は花弁をとってみると中に1本の棒がありその周りに下のほうに雄蕊がらせん状についていて、その上に雌蕊がついています。つまり原始的な形が残っている花型だといえるでしょう。
近頃植物の分類体系に新しい考え方が広まってきたと2010年3月2日の朝日新聞の記事があり、それによるとDNA情報を基にした分類体系で、モクレンやスイレンなどは「原始的双子葉類」なるそうです。
それはさておき、鈴鹿山脈に自生しているタムシバとコブシの違いを見分けるのは、コブシには花の下に小葉がつきますがタムシバにはそれが無いことでよく判ります。 牧野図鑑によるとコブシに漢字の「辛夷」を使うのは誤用で本来はモクレンのことである、と解説があります。
風なくて崩る丶花のこぶし哉 巴水
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