西南日本に自生するヤマガキが栽培される柿の原種ということですが日本と中国を自生地とする図鑑もあり、第三期鮮新世、洪積世に化石が出ないこと、奈良朝以前の遺跡から遺物が出ない事などから、中国から伝来したとする図鑑もあります。
『延喜式』の中に、カキの実が宮中で使われていることや、当時の宮廷用果樹園に百本ほどのカキの木が植えられていた事が書かれているので、平安時代の早い頃から柿が食用とされ、干し柿が甘味料として重宝されていたのではないかと思われます。
カキは落葉高木で高さは大きくなると10mにも達し、材はかたくて器具などに使われますがやはり実を生食するために栽培されるものが多いようです。甘柿と渋柿があり、若い実は何れも渋いのですが、熟すと甘柿は渋が抜けます。カキが渋いのは実に含まれているタンニンのせいですが、甘柿は熟すとタンニンが不水溶性になり渋みを感じなくなります。渋柿は赤く熟しても渋いのです。野生の柿はとても渋くて食べられませんがお猿は平気で食べます彼らの味覚はどうなっているのでしょう。
シブ抜きには色々の方法がありますが、樽にいれて熟成させる、アルコールまたは炭酸ガスで渋抜きをする等地方で色々なやり方があるようです。柿渋は食べるのには厄介者ですが防水防腐効果があるので昔は和紙に塗って渋紙とし、糸や布を染めたり笠に塗ったりしたそうです。今でも伊勢型紙は和紙を渋糊で張り合わせて使います。
カキの花は6月ごろ葉影に淡黄緑青のつぼ状の花を着けますが目立ちません。やはり、晩秋に夕日に輝く柿の実は秋の風物詩でしょう。
正岡子規の「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」の句は有名です。葉の落ちつくした柿の木に1、2個取り残された(木守柿)は風情があります。
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