アヤメは初夏の花です、畑の隅やお庭に濃紫の花が美しく咲いています、でも何故か花壇の主役にはなれないようです。諺に「6日のアヤメ10日の菊」というのがあります、何れも時期を逸して役に立たない物のたとえです。
5月5日は端午の節句でショウブを葺き、ショウブ湯を立てます、9月9日重陽の節句に菊を飾りますが、5月6日にショウブが、9月10日に菊があっても一日遅れで役に立ちません。ところで、少しおかしいと思いませんか、だって端午の節句はショウブでしょう、なぜアヤメなの? 昔はショウブのことをアヤメと呼んでいたそうです。そこで牧野富太郎先生の「植物知識」からアヤメの項を紹介しましょう
アヤメ アヤメといえば、誰でもアヤメ科のIris属のものと思っているでしょう。それも其の筈、こんにち今日ではアヤメと呼べば一般にそうなっているからです。しかし厳格にいえば、このアヤメはまさにハナアヤメといわねばならぬものでした。なんとなれば、一方に本当のアヤメがあったからです。とはいえ、この本当のアヤメの名は、こんにち今日ではすでに廃れてそうは言わず、ただ、(万葉時代の)古歌などの上に残っているに過ぎないのでそう心配するには及ばない。
さて古歌にあるアヤメグサ、すなわちアヤメは、ショウブすなわちはくしょう白菖のことです(世間一般に今ショウブと呼んでいる水草を菖蒲と書くのは間違いで、菖蒲は実はセキショウの中国名です。ショウブの名はこの菖蒲から出たものではあるが、それは元来間違いであることをわきまえていなければならない。)そして前のIris属のハナアヤメとは、まったく違った草です。 昔、ショウブをアヤメといっていた時代には、今のIris属のアヤメは、前記のとおりハナアヤメといっていたが、ショウブに対するアヤメの名が廃れた後(恐らく中世以降)は、単にアヤメと呼ぶようになり、それがこんにち今日の通称になっている。すなわち白菖がアヤメであった時は、こんにち今日のアヤメがハナアヤメであったが、アヤメの名がショウブとなるに及んで、ハナアヤメがアヤメになり時代により変遷のあったことを示している。(なんともややこしい話です。なおカッコ内下線部は編者の挿入)
この後 潮来節の歌詞についての説明があり先生は疑問を呈しています。問題の潮来節の1節を紹介しますので今までの先生の記述を参考にして皆さんでおかしいな?と思うところを探してください。
潮来出島のまこもの中に あやめ咲くとはしほらしや
潮来出島のまこもの中に あやめ咲くとはつゆしらず
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